スピーチとスカートは短い方がいいと申しますが

なんでもこうした大規模な国際短編映画祭としては西日本で初の試みだそうで、だったらどうしてもっと各所で前宣伝をしなかったのかと思うのだが(私がこれを知ったのもけっこう直近になってからの話。もっと早く知ってたらいろんなところで告知したかったのに)私はなんとか二日目の19日に都合を付けて観に行くことが出来たのだった。
企画のきっかけになっていたのは徳島県が掲げている「vs東京」という田舎モンの都会コンプレックス丸出しな共通コンセプトで(コレは地元民のひとりとしてはひじょーに気恥ずかしいものだと思っている。なぜ今になって東京を意識しなければならないのか?対決姿勢を打ち出していったいなんのメリットがあるのか?また、どれだけ煽ったところで東京の方はなんとも感じてくれないアホな片思いみたいなまつりごとを今後どう展開していくのか?と納得できる要素が一つも無いのだよ。我が輩は東京を目指してそこに並ぶことを目標にするより、むしろ徳島でしか為しえないオンリーワンなローカルならではの魅力を追求した方が良いのではないかと言いたいのだ)おそらくは文化方面施策の一環としてエントリーされたのではないかと思うのである。
で、映画祭自体は北海道の方で2006年から開催されている「札幌国際短編映画祭」と連携し、今回は協賛という形で協力体制を取っているという話でもあった。メイン会場である"あわぎんホール"を軸にしていろんな国のショートムービーを上映し、中では小中学生向けのワークショップをやってみたり、少し離れた場所にあるufoシネマではアニメーションの短編上映があったりと、なかなかコンパクトに纏まったものとなっていた。
あわぎんホールの上映では大小二つのホールを使い主要作品はほとんど大ホールの方で流され、徳島出身の監督たちが撮った自主製作映画は小ホールの方でかかることになっており、私はそちらの「徳島ショートムービーⅠ」と銘打たれたプログラムだけを見てきたのだけれども、とりあえずそれらの簡単な感想を書いておこうかと思っている(他の短編は今後何かの形で鑑賞可能な気がしたが、こっちはそう見る機会もないだろうと言うことで。各作品の概要については下記画像を参照)

おおっという映像表現やカット割りで唸るような物はナニもないありきたりな短編ではあるけれども、自分も何度か現場に行ったことがあるあのへんのとんでもない秘境ぶり(今すぐ「大怪獣バラン」の舞台に使えそうなレベル)というのを思い出すと(__;)よくこれだけ綺麗なビジュアルに処理できたなと、そこは感心できる要素だったと思うのである。たぶん知らない人がコレを見たらちょっとココ行ってみたいなと思わせる効果があることだろう。
2.「一匹の親分-マタタビ地獄篇-」(監督/小川岳志)・・・東映でディレクターをしている小川監督が太秦のスケジュールの隙間を利用して二日間で撮り上げたという緩い時代劇アクション。僕はこういうのが好きなので( ̄。 ̄;)けっこう楽しんでしまったのだが客席のリアクションは案外鈍く、どう反応して良いのか困っているような感じでもあったかな。
敢えてツッコミを入れるならもう殆ど"出オチ"映画になっているわけで、これを20分の尺で仕上げたのは少々長かった気はする。ただ、立ち回りのところを「猫の爪」「鰹節の短剣」で見せ場にしたのは旨いなと思えたし不満らしい不満といえばそれくらい。
3.「ゆれもせで」(監督/川原康臣)・・・個人的に応援している川原監督の2011年度作品。震災テーマの映画としてこういうアプローチは珍しいというか、他に類を見ないんじゃないかと思わせる意外性溢れた不思議な短編。
この人の過去作では主にロケの風景(どうしてこんなに淡い水彩画みたいな色の絵が撮れるのかというカメラ/編集センス)が魅力的だったのだけれども本作は室内での話なのでそれはなく、代わりにもう一つの特徴でもある(と、我が輩は思っている)男と女の「心の棘の毟り合い」がリアルに展開されていて、そこは濃厚に良さが出ていたと思うのである。
4.「奇跡は空から降ってくる」(監督/明石知幸)・・・特に説明はなかったのだが本作は10年くらい前に別企画で作られた作品らしく、主演がブレイク直後の山田優だったりとこの枠の上映としては今見たら豪華な感じがした(ほかでも相手役が劇場版「仮面ライダーアギト」でG4を演っていた唐渡亮、共演女優も街田しおんとか最近よく見る顔もちらほら登場する)
ハッキリ言ってそんなに面白い話ではなかったけど(HD撮影じゃないのか画面がザラついてかなり見辛かったのもあるが)こういうベタも一本くらい混ざってて良いんじゃないかと思ってしまった。これはひとえに子役(清水萌々子。「誰も知らない」の次女役で有名)の安定感ある芝居のおかげ。
5.「夕暮れの帰り道」(監督/井坂聡)・・・監督の井坂氏は徳島出身ではないけれども、プロデューサーの山口敏太郎が徳島出身という縁で(なんと我が輩と同級生で城南高校出身だとか。高校は違うが城南とウチの学校は交流があったので或いは当時ニアミスした可能性はあるかも)この作品を出品することになったそうだ。元々これは柳ヶ瀬のお化け屋敷に使用する映像として作られたものだそうで、なるほど通常のホラー映画と違ってやたら主観映像が多いのも頷けるという作り(自分がそこを歩いている感覚に浸れる見せ方)
本編に登場するカラコン入れただけの口裂け女もどきはまるっきり怖くないのだが( ̄▽ ̄;) その道中に写る無人のシャッター商店街やビルの廃墟、誰も歩いていない日没直前の狭い路地といった現実の風景が(カラー調整で色を落としただけなのに)なんだか気持ち悪くて怖いのである。この辺のロケ地選定の旨さはホラームードをかなり上げることができており、たぶんこういうホールじゃなくてお化け屋敷の中で見たら所々で「ひょえっ」と悲鳴の一つもあげていたことだろう(>o<)
と、いうことでこの日はこの5本しか見ることが出来なかったが、大小どちらのホールも来場者は多かったし(なにせ無料)概ね良い雰囲気で進行されていたので、これなら第2回の開催も期待できるかもしれないと思っている。
来年もしこの映画祭を徳島でやるのなら、もっとメディア展開を手広くやってプログラムによっては(たとえば役者のトークショートか)有料にしても良いんじゃないかと思うので、今後も根気よく続けて徳島の名物企画になっていくことを願いたい。
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