ジプシー・デンジャーとストライカー・エウレカでパンチ・パンチ・パンチ
思っていた以上の直球勝負な映画だったので驚くと同時に潔い清々しさをも感じてしまった。ちょうど高校野球の時期に見たせいもあったけど一球も変化球がなかったのは(実際の高校野球はもはやそうではないのだが(__;))たいしたもんだと拍手したい気分にもなったよ(ハリモトの面を被って「あっぱれ!」を20枚くらい貼ってあげてもイイくらい)
この映画は今この時期に見た人もたくさんいると思うので敢えて細かいことは書かないが、いち特撮怪獣映画ファンとしてはアタマから最後まで「わかる、わかるよ(__;)」と言い続けたくなるような作品だったと思うのである。この感覚はピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」を見たときの気分にも酷似しているのだけど、要するにお金を目一杯使って好きなことだけ(やりたかったことだけ)やりました!という実は他の誰よりも撮っているギレルモ・デル・トロ監督が一番楽しかったのではないかと想像できるような、そんなスーパー・プライベート・フィルム感が満載なのだ。
これは自主映画を撮ったことのある人なら多分わかってくれると思うけど、自分で映画を作ろう!と思って実際に撮ろうとすると、どうしたって自分の好きだった作品の模倣・コピーから入るのは仕方のないことでアノ映画のコノ場面、と言った脳内に刻まれている「好きだったあのシーン」を自らも撮ってみたいという欲求は(このへんは想像の域を出ないけど)たぶん彼らのようにプロの映画監督として名を馳せた今でもずっと持っているものでは無いかと思うのである。
なので本作を見ているとストーリー部分は削りに削ってシンプル極まりない物になっているぶん、怪獣VSロボットのバトルシーンに比重がとことん取られていて、そこまでやる必要があったのかと思うほど細かい描写(イェーガーが大きく動くたびに某かのパーツが少しずつ吹っ飛んだり、怪獣の生物感が異常に生々しく描かれている点等々)が延々と続いているのも一介の怪獣・ロボットアニメファンに退行したかのような監督(コノ人ほんとに好きなんだなあ(ーー;))のこだわりを感じずにはいられないのだ(メイキング映像を見たわけではないが、きっと嬉しそうに撮影を進めていたハズ)
僕はロボットアニメについては「エヴァンゲリオン」以外では「エルガイム」で時間の止まっている人なので(__;)どこまでのオマージュがあったのかは定かでは無いのだが(「エルボー・ロケット!」と技の名前を叫んだのは良かったなあ・・・)特撮ファン的視点で見るとイェーガーの操縦方法などは「ジャンボーグA」ではないかと思ってしまったし(続編で車のようにハンドル操縦をするロボット(←この場合はジャンボーグ9)が出てきたらたぶんそうだと思う)次元の裂け目から侵略者が作り出した怪獣を送り込んでくるなんてのは「ウルトラマンA」のヤプール人と超獣みたいだなと思ったしねー・・・(コレも確証はまったくないけど)
あとサンフランシスコに最初の怪獣が登場する場面や、シドニー/香港に別の怪獣が出現して都市破壊をするシークェンスなどでは東宝のゴジラシリーズ等で見慣れた奥行きのある絵の組み方をされており(むしろ原典のそれ以上に良く出来た場面になっていたし)そこだけでも「おおーっ」と感動してしまうところはあったのだ。だいたい海外作品で巨大怪獣が登場する場合、過去の映画などでは実際にいる生物の延長線上である昆虫や恐竜を大きくしただけ(或いは不定形でよくわからない形)みたいなものが多かった中で、このような超生物(上の書き方で言うとまさに「超獣」)がこんなに次から次に出てくるハリウッド映画なんて僕は初めて見た(ーー;)
これがイェーガー対怪獣の対決ともなると動きは速いし重量感はあるし、そのうえ画面の巨大感はまったく崩れることも無いというスゴイ場面が果てしなく続いていくのに、もう口がポカンと開いたまままったく閉まらない有様で(__;) ひたすら続くバトルをただただ驚愕の眼差しで眺めているという感じなのである。
デザイン的にはイェーガーは巨大ブリキのおもちゃみたいで、個人的にはそれほどカッコ良いとは思えなかったのだけど(空を飛べないからヘリで空輸するというのが、そこだけはマヌケでなんとも可笑しい(^◇^;))乗り込むメンバーは全員が個性的で気に入っている。バトルシーンの割を食って出番は少なくなってしまったがチャイナブラザースやロシアンカップル(あの二人は「ロッキー4」でロシア人夫婦やってたドルフ・ラングレンとブリジット・ニールセンをほんの少し思わせる)など、脇のメンバーとしても皆最高だ。怪獣デザインの方はなんとなくだけど「デビルマン」のデーモン調にも感じられて奇怪さもかなりなものだし。
それと忘れてはいかんのは音楽も敢えて今風では無いスコアに仕上げられていて、聴いていると伊福部昭とハンス・ジマーをブレンドしたかのようなムードの曲調になっているのがタマランのである。この10年新作映画のサントラなんてこれっぽっちも欲しいと思わなかったけど、久しぶりに買ってみようかと真剣に考えているほどなんだか心がざわついている(ちょっと「アイアンマン」にも似てるなーと思ったらホントに「アイアンマン」の音楽担当だったラミン・ジャヴァディだった・・・)
僕からするとツマンなかったところを探すほうが難しい映画だったけど、たぶん怪獣映画やロボットアニメにあんまり馴染みのない人からすれば「話ないやん」とか「どこがおもしろいの?」と思われる場合もあるだろう。ただそのジャンルを好きだった人が好きなことをして作り上げた映画を、これまた好きな人たちが愉しんでいるという、作り手と受け手側の一体感を濃厚に感じるシアワセってのも世の中にはあるんだと(^_^;)わかってくれとは言わないが、容認だけはしてもらいたいと思いますわ。
うーむ、やはりこれは3D吹替版も行っておくべきかもしれんな・・・(ーー;)
- 関連記事
-
- ある時は5つ、ある時は1つ、実態を見せずに忍び寄る白い影・・・のハズ (2013/08/31)
- 夢見るように眠りたい (2013/08/27)
- ジプシー・デンジャーとストライカー・エウレカでパンチ・パンチ・パンチ (2013/08/19)
- 止まらないWar~War (2013/08/17)
- 鋼鉄を脱ぐとき、それは今 (2013/05/05)