ギザギザハードの殺し唄
ロビーにはたくさん人がいたにも拘わらず中の客はどこまで席を見渡しても一桁人数をオーバーせず(ーー;) なのに我が輩の近くに座る奴が多いのは何故なのか・・・さて、それでこの「キャビン」だけど見に行った理由としては僕が見た範囲ネット上での評判がなかなかに良かったのと、製作/共同脚本が大好きなジョス・ウェドンであるという情報を聞いたのが決め手になっていたのである。
全国的な動員数や実際の客ウケ加減はどの程度だったのか全然わからんのだけど、今日に限ってはこの映画がたったの数人にしか見られていないことが心底残念になるほど僕個人はかなり面白かったと思っている。また、こういうホラー/スラッシャー系の映画でここまで楽しくて可笑しくてワクワクする作品なんてなかなか出会えなんじゃないかとも思ってしまった(ーー;)
ストーリーの基本導入部である若者の男女グループが山荘で酷い目に遭っていくというのはこの手の映画にありがちな正に"ド"がつく定番中の定番ではあるけれども、何というか物語全体の構造というか展開のさせ方というのが一風変わっているのだ。たとえて言うとキタナイ商店街の中で「天下二品」みたいなパチもん臭い名前の店に入ってみたら最初は何処にでもある味やんかとナメていたのに奥からどんどん予想外の味が広がってくるという、まるで隠れていた名店を見つけたかのようなそんな小気味よさすら感じたほどなのである(我ながら伝わりにくい話を書いとるなあ・・・(__;))
ネタバレに触れない程度に簡単に書いてしまえば話の入口こそ「スクリーム」なんかでやっていたような二番煎じのメタホラー的な事をやろうとしているように見えるのだが「キャビン」の場合そういう"ホラー映画のお約束"にはちゃんとした理由があるんだ!とキッパリ劇中で提示することにより観客側に対して「どうせパターンだろ」という邪な安心感を抱かせることを排除させるのに成功していると思うのである(中盤からは映画の終着点が霞んで見えなくなってくる感覚に襲われたよ)
それで最後まで見て行くとああ、これってやっぱりジョス・ウェドンの世界観なんだって僕みたいな彼の作品(主に「パフィー/恋する十字架」と「エンジェル」)のファンだった人からすると得心することがいっぱいあるのもこの映画を気に入ったポイントになっていて、なるほどここには正義の美少女スレイヤーも善の心を持ったイケメンヴァンパイアも登場しないけれども、普通の人たちが無い知恵絞って必死で"地獄の蓋"(先に書いた二つの番組ではお馴染み)を開けないようにしているという、そんな映画だったんだなと僕は手前勝手に解釈させて貰っているのである。
あとこの映画の楽しいところとしてはとにかく台詞が抜群に面白いところがあって、これは字幕監修をされた映画評論家・町山智浩氏のお力もあってのことだろうとは思うのだけれども、すごく残酷なことを画面ではやっているのになぜだが爆笑(ーー;)してしまうところが多々有るところで、おそらく本作の参考基本ベースになっているであろう「死霊のはらわた」と笑いのツボが同じだったことに大いに感心した。あと、出てくる奴らがどいつもこいつも他のいろんな"それ系"映画で見たような連中だったのも元ネタ知ってる人が見たらニヤリと出来ること請け合い。
それにしてもせっかく「アベンジャーズ」でメジャー監督になれたハズのジョス・ウェドンが未だにこういうマニアックな映画に拘わっているのかと一瞬どこまでコイツこんなん好きなんだよって思ったけど、よくよく見ればこの映画2011年の作品らしく「アベンジャーズ」より前だったワケかとエンドクレジット見て最後に納得。今後どれだけ出世しても何年かに一本くらいは飽きずにこの手の映画かドラマやってほしいものですな。
役者ではホントの主役は「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースとクリステン・コノリーだけどジョス組のエイミー・アッカー(「エンジェル」のフレッド他)やフランク・フランツ(「ドールハウス」のトファー)が主要キャストで出ているのが個人的には嬉しかった。それと最後に超大物の登場もあるので未見の人はお楽しみに(たぶんアタマの中で思ってる人がそのまま出てくるはず)
とにかくいろんな意味で大当たりな映画であったと断言しておきましょう。
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